骨がスカスカになった状態が骨粗鬆症
骨は細胞成分(骨芽細胞・破骨細胞など骨細胞)、骨ミネラル(主にカルシウムとリンからなる結晶)、ミネラルが沈着する基質(コラーゲンなどのたんぱく質)の3つの成分から成り立っています。この成分に変化がないまま、骨の新陳代謝のバランスがくずれて、骨吸収が骨形成を上回り、骨量が病的に減少し骨折しやすくなった状態が骨粗鬆症です。骨粗鬆症の「しょう」は「鬆」と書きますが、これは「す」とも読みます。粗は「あらい」という意味ですから、つまり私たちの骨が「す」のはいった大根のようにスカスカになってしまった状態を指しているわけです。
骨折しやすいのが骨粗鬆症の問題点
私たちの骨は20代から30代にかけてピークとなりますが、年齢とともに減少し、80歳くらいになると、若年時代に比べて男性で約30%、女性は約40%も骨量が減少するといわれます。骨量の減少自体は生理的なものですが20~30%も骨量が減少し、骨の微細な構造が壊れ、その結果として骨折しやすくなった状態が骨粗鬆症。
骨量の減少は他の病気が原因となることもありますが、多くは主に骨の中のミネラル成分が減少足することによって引き起こされます。初期にはほとんど自覚症状がなく、それ自体はあまり重篤な病気ではありませんが、骨折を起こすことにより、姿勢の変化をきたし内科的疾患(呼吸器、循環器、消化器疾患)にかかりやすくなったり、大腿骨頸部骨折から寝たきり状態となったり、ということが問題となっています。
骨粗鬆症には2タイプあります
骨粗鬆症は骨吸収(古い骨を溶かし、壊していくこと)と骨形成(新しい骨をつくること)のバランスの崩れ方によって2つのタイプに分かれます。
健康な人は骨吸収と骨形成のバランスが良く骨の新陳代謝が行われます。
しかし、骨形成は問題なく行われているのですが、骨吸収が骨形成を大きく上回っている場合に骨量が減少します(=高回転骨)。また、骨の新陳代謝が低下して骨形成、骨吸収が共に健康な人より下回り、特に骨形成が骨吸収より低下している場合にも骨量が減少します(=低回転骨)。
一般的に原発性骨粗鬆症では「高回転骨」の骨粗鬆症が多いと考えられています。
基本的に「高回転骨」の場合には「骨吸収」が上昇しているので「骨吸収」を抑える「骨吸収抑制剤」を使用します。骨吸収抑制剤にはエストロゲン製剤、エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、ビスホスホネート製剤、カルシトニン製剤などがあります。
一方、「低回転骨」の場合には骨形成の働きを活発にするために「骨形成促進作用をもつ薬剤」が使用されます。骨形成促進作用をもつ薬剤にはビタミンK製剤などがありますが、現在海外では副甲状腺ホルモンが自己注射の形態で用いられています。
また、活性型ビタミンD製剤には骨吸収抑制と骨形成促進の両方の作用があります。
骨粗鬆症の危険因子
骨粗鬆症になりやすい人とそうでない人とあるのでしょうか?
骨粗鬆症の危険因子には、自分でコントロールできるものと、できないものがあります。女性で閉経後であることは最大の要因となりますが、人種、家族歴などの遺伝的因子、卵巣の病気などを含め、自分でコントロールできない、いわばやむをえないものといえます。
それに対し、生活習慣は自分でコントロールできる解決可能な要因です。
生活習慣や環境からくる骨粗鬆症の危険因子は次のようなものです。
| 栄養不足 | カルシウムやビタミンDをはじめとする種々の栄養不足は骨量を低下させる。 |
| 塩分過多 | カルシウムをしっかり摂ったつもりでも、塩分と一緒に尿中に捨てられる。 |
| 運動不足 | 骨量ばかりでなく、筋力も低下して骨折しやすくなる。 |
| 多量の飲酒 | 間接的作用として栄養不足を招いたり、肝臓におけるビタミンDの代謝障害を起こし、骨量減少を招く。 |
| 多量のコーヒー | カフェインが尿からのカルシウム排泄を増加させ、骨量を低下させるといわれるが、カルシウム摂取が十分であれば問題ない。1日3~4杯以上は要注意。 |
| 喫煙 | 女性ホルモン低下、カルシウム排泄増加を招き、骨量に影響を及ぼす。 |
| 日照不足 | ビタミンDの不足を引き起こす。 |
| やせすぎ | 栄養不足と関係し、筋肉量が少ないので骨折しやすい。 |
骨粗鬆症予防のためには、食事や運動など生活習慣に気を配ってこれらの因子を避けることが重要。これは同時に、その他のいろいろな生活習慣病の予防にも効果的ですね。
ほかの病気が原因に!?
糖尿病
生活習慣病の代表選手ともいわれる糖尿病は合併症が怖いことが知られています。3大合併症といわれる腎症状、神経症、網膜症に加えて、最近では骨粗鬆症も無視できない合併症となっています。
糖尿病治療のための食事制限などによりカルシウム摂取不足を招きやすく、また長期にわたる高血糖が骨の正常な新陳代謝を阻害し、骨を弱くすると考えられるのですが、それ以外にも糖尿病が進行すると網膜症のために視力が低下したり、神経症などのために感覚が十分ではなく、転倒する機会が多くなり骨折の危険性が高くなるからです。
さらに糖尿病患者さんでは緊急手術が望まれる大腿骨頚部骨折においても、時として待機手術をせざるを得ない状況に往々にして直面します。転倒しないよう気をつけるとともに、日頃の骨の健康維持により一層の配慮が望まれます。治療には活性型ビタミンD製剤、副甲状腺ホルモン、ビタミンK製剤などが有用ではないかと考えられます。
慢性腎臓病(CKD)
腎臓は老廃物を尿として排出して体液の調節を行うほか、血液中のナトリウム、カリウム、カルシウムなどの濃度を正常に保つ働きをしており、またビタミンDの活性化や造血ホルモンの分泌、血圧の調節などに関わるホルモンの産生・分泌もしている重要な臓器です。
食物中のカルシウムを腸管から吸収するためには活性型ビタミンDが必要であることはよく知られていますが、腎臓の機能が低下するとビタミンDの活性化も低下し、活性型ビタミンDの不足からカルシウム代謝異常、二次性副甲状腺機能亢進症などを引き起こします。
二次性副甲状腺機能亢進症では骨吸収と骨形成が激しい状態(高回転骨)となりますが、やがて骨形成が骨吸収に追いつかなくなって骨量が減少してしまいます。それによって生ずるのが骨痛や関節痛、骨折の多発などの症状を伴う線維性骨炎で、慢性腎不全による骨障害の代表ともいえます。
このように腎臓は体内のカルシウムバランスの維持に大きく関わっているため、骨とはとても関係の深い臓器といえます。
肝臓病
肝臓はさまざまな物質を産生したり、胆汁を分泌しています。肝臓の機能が重度に低下すると、腸管からのカルシウム吸収を促進する活性型ビタミンDの産生が低下します。また胆汁の分泌が低下すると腸管からのビタミンDの吸収が悪くなります。
その結果、血液中のカルシウムが減少し、骨からカルシウムが溶け出して骨量が減少してしまうわけです。予防法としては、食事からの十分なカルシウムとビタミンDの摂取、適度な運動と日光浴が大切です。
甲状腺の病気
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは骨を造ったり、骨からカルシウムを溶かす作用があります。この甲状腺ホルモンの分泌が亢進すると、骨からカルシウムが溶け出す方が勝り、骨量が減少します。
甲状腺機能亢進症は大半がバセドウ病で、女性に多い病気です。甲状腺ホルモンの過剰が原因ですのでホルモン過剰を是正することが骨量の回復に一番大切です。閉経期以降の方の場合骨量減少が加速されますので、安静が必要な急性期を除いては、日頃から食事や運動に注意することが大切です。
婦人科の病気
女性ホルモンであるエストロゲンは、骨に対して重要な働きをしています。したがって閉経期以前の性成熟期にある女性でも、何らかの原因により性腺機能が低下し、エストロゲンの分泌が低下すると、骨量の低下が起こり、骨粗鬆症やそれに伴う骨折のリスクが高まります。
性腺機能低下の原因は様々で、先天的なものや、神経性食思不振症、両側卵巣摘出、過度の運動による無月経などの他、降圧剤(レセルピン、メチルドーバなど)や胃腸薬(スルピリド、メトクロプラミドなど)の長期服用でも起こる可能性があります。原因のわからない無月経や稀発月経も性腺機能の低下を疑う必要があります。
性腺機能低下による骨量減少の治療の原則は、性腺機能の回復です。原因と考えられる因子の除去が大切で、適度の運動の勧め、ダイエットの中止、また薬剤性の場合は中止や他の薬剤への変更を行います。下垂体腺腫では外科的治療を行うこともあります。それでも改善が認められない場合は、薬物療法を開始します。
薬物療法の第一はエストロゲンの補充療法(ERT)です。しかしERTだけでは完全な骨量の回復が得られないことも多く、その際にはビスホスホネートやビタミンD、ビタミンK2といった薬剤を使用します。またエストロゲンを用いた治療では乳癌、子宮体癌や血栓症のリスクが指摘されているため、その管理には十分注意が必要となります。
さらに、性成熟期の骨粗鬆症では治療によって骨量増加が認められても、依然その頂値が低いため、閉経や加齢に伴う原発性骨粗鬆症の予備軍であることが多く、長期間のフォローが必要となります。
関節リウマチ
関節リウマチも骨粗鬆症とは関係の深い病気です。まず、関節リウマチで分泌される炎症を起こす物質は、破骨細胞を活性化して関節周囲の骨量を低下させます。さらに病状が進行すると、痛みなどのために体を動かすことが困難になり、骨量の低下は全身におよぶことになるのです。
一方、治療に使われるステロイド剤では、腸管からのカルシウム吸収を低下させるという副作用があります。さらに、個人差はありますが、ステロイド剤は、骨をつくる骨芽細胞の働きを低下させるとともに、骨をこわす破骨細胞の働きを高めて骨量を減少させます。これらの作用により、ステロイド剤を内服した患者さんでは、その骨量が減少して骨折を起こしやすくなります (ステロイド骨粗鬆症)。
関節リウマチは女性に多い病気ですので、閉経に伴う骨量減少もあわせて、骨粗鬆症のリスクがより高まるといえます。関節リウマチによる骨粗鬆症の治療は薬物療法とリハビリテーションに分けられますが、いずれにせよ関節リウマチ自体の早期発見、早期治療が第一です。
薬でも骨量が減少することがあります。
いくつかの薬剤では、長期に使用すると、骨量減少、ひいては骨粗鬆症を引き起こす原因となることが知られています。
その主なものとして、副腎皮質ホルモンのグルココルチコイド(GC)、関節リウマチや白血病に対して投与されるメトトレキサート(MTX)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、抗血液凝固剤(ヘパリン)、抗痙攣剤などが挙げられます。特にGCは骨形成を抑え、骨吸収を促進するばかりでなく、腸管からのカルシウム吸収を抑え、尿中へのカルシウム排泄を促進して、骨量減少に大きく影響します。GCはじめこれらの薬を必要とする疾患のある方で、骨粗鬆症が気になる方は担当の医師にご相談ください。









